2021年2月2日 更新


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日本手話学会第26回大会

日程:2000年6月24・25日

場所:東京外国語大学

 

【研究発表】

日本手話の助動詞について

市田泰弘・川畑裕子(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

日本手話には助動詞はあるのだろうか.そもそも助動詞とは何だろうか.本論では,日本手話において助動詞という品詞を想定することの有効性について論じるとともに,日本手話にも助動詞が多数存在すること,それらが独自の文法化の結果であることを指摘する.

 

日本手話におけるロールシフト

小薗江聡・木村晴美・芳仲愛子・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

手話言語におけるロールシフトとは,話者が現在の話者以外の他者(過去/未来の話者も含む)の役割を演じることである.その時,話者の非手指動作,すなわち,表情,視線,上体の動きは,それぞれ他者の表情,視線,身体動作を表している.ロールシフトは,手話言語の文法構造において,きわめて重要な役割を果たしているが,詳細な分析話されていない.本論では,ロールシフトの詳細な分析のための枠文を提示したい.

 

日本手話の否定の表現に関する研究

赤堀美里・乗富和子・赤堀仁美・津山美奈子・福田友美子(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)

聾者の自然な対話(延べ1時間・総語数1万2戦後)を研究対象にして,「違う(L)」『ない(て)』「ない(め)」「いや」の語を用いて表現している否定の表現の中で,「首振り」がどのように表現されているか研究した.否定の文の中では,首振り動作は表現されている文の統語構造に従って表現されていた.また,首振りと同様に文法表現が頭の動きによって表現される疑問文のような中で否定が表現される場合には,首振りが省略されても正しい文とされることがわかった.次に,語自体に否定の意味がある語を対象に,それが使われている文例で,首振り表現を研究した.語の前後に頭の動きを伴うような文例では,首振りが消失したり,首振り動作のあいまいな表現である「頭をかたむける」動作に変形しても,正しい文とされることがわかった.

 

非手指副詞と強弱表現

市田泰弘・江藤雄二(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

日本手話における修飾表現の分析と手話アニメーションへの付加

村上満佳子・田畑慶人・黒田知宏・眞鍋佳嗣・千原國宏(奈良先端科学技術大学院大学)

従来の手話アニメーションでは,形容詞の程度情報を正しく表現できていない.そこで本研究では,修飾表現を手話アニメーションに導入する手法を提案する.本報告では,就職後による手話の強調表現に関する分析結果と,これに基づき生成したアニメーションに関する主観実験結果について報告する.

 

日本手話に特徴的な話法

森壮也(アジア経済研究所)

近年,日本手話の様々な特徴が音韻論,形態論,統語論などのレベルで観察され報告されるようになってきている.これらは日本手話の言語的特徴を明らかにしてくれているという意味で大変有意義であり,今後もそうした研究は続けられなければならない.一方,ある事象を表現する際の話法という意味で聴者の手話学習者とろうの手話使用者との間で大きな差が見られることが特にろうの手話指導関係者の間で言われてきている.その一部はロール・シフトという形でのものであるが,それに限らず,今回はそうした差について記述的にこれを述べてみたい.これはろう者から見た時により自然な手話になるという意味で,手話通訳者の学習上のヒントにもつながるのではないかと思われる.

 

談話分析に見る詩的表現:ろう文学の可能性

棚田茂(日本大学大学院総合社会研究家文化情報専攻)

ろう者の談話スタイルは様々あるが,その中で物語性の高い談話,韻律のある談話について日本国内ではあまり研究されてこなかった.言語芸術の一環としてろう者演劇が著名であるが,最近では手話詩も創作され,ろう文学の基盤が出来つつある.ろう文学に見る談話の詩的表現について分析を試みた.これについて考察する.

 

手話通訳作業に関する心理言語学的研究:その3訳出パターンおよび通訳中に用いられている手話の特長

白澤麻弓(筑波大学大学院心身障害学研究科・日本学術振興会特別研究員)

ある言語(sL:source language,起点言語)における考えや概念を,他の言語(tL: target language,目標言語)に変換する作業のうち,起点言語および目標言語に音声または手話を用いる形態のことを通訳と言う(Brislin,1976).本項では,日本語から手話への同時通訳を取り上げ,この記述分析を通して,通訳者ごとの訳出パターンや用いられている手話の特徴を明らかにすることを目的とした.この結果,通訳者の訳出パターンには,脱落,言い換え,圧縮・統合の各変換作業が大きく関係していること,訳出表現のうち,区切りの表示の仕方,不要な間の出現回数は個人差が大きく,これが訳出表現の見やすさに影響を与えている可能性があることなどが明らかにされた.

 

高齢ろう者と若年ろう者の手話表現の違い:予備的検討

乗富和子・赤堀仁美・赤堀美里・津山美奈子・福田友美子(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)

20歳代・30歳代・50歳代・60歳代のろう者の自然な対話を研究対象にして,高齢のろう者と若年のろう者の手話表現の違いを,語彙の使用の仕方・顔の表情や頭の動きなどの非手指表現・CL表現などについて,研究した.その結果には次のような傾向があった.①使用語彙について,高齢と若年のろう者のではその表現が異なっているものが多数あった.②高齢者は顔の表情で副詞的な表現をするのに対して,若年のろう者ではそれを語に置き換えて表現している例が多数見られた.③高齢者では,文の構造を表現していく上で,「頷き」など頭の動き+PT−3で表現されているものに,若年者では手指動作による語表現が付け加わるものも多かった.

 

ボリビア手話のルーツの探索:クラスター分析モデルを使用して手話方言の分類法

茂流岸マイク

本発表ではボリビア手話を紹介する.米国手話ASLとの類似性を述べた後,これがASL方言の1つであろうという提案をする.他のASL方言の中,どの地位を占めるか決めるため,コンピューター・プログラム・クラスター分析方法を使って,Shroyer & Shroyerの方言データを分析する.米国それぞれの州の手話と他の州の手話との関係についてのデンドログラム(樹形図)を作る.最後に,ボリビア手話の地位を決めるため,残る課題を述べる.極小な予備データと簡単な統計を使用して,仮定結果を述べる.

 

日本手話における日本語口形について

佐々木大介(テキサス大学オースチン校大学院)(予稿なし)

 

最適性理論による両手手話の研究:試論

佐々木大介(テキサス大学オースチン校大学院)(予稿なし)

 

日本手話におけるWeak Dropについて

宮原麻衣子(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

日本手話における時間構造の分析

平山望武・堀内靖雄・市川熹(千葉大学)

 

韓国手話について

宮本一郎(日本手話研究所外国手話研究部)

Getting Collaboration of Korean Association of the Deaf, Members of Foreign Sign Department, Japan Institute for Sign Language Studies, JFD visited to Korea from 26th October to 4th November 1999, and investigated Law, Life, Labor, Sign Language concering on Korean deaf people.

 I recorded Korean Sign Language from three informants. I will present of the analysis on Phonology and Semantics.

 

小高学年の「スピーチ練習」における手話能力の向上

伊藤貴俊・小野広祐・岡本真未・坂口公将・赤堀仁美・今里見(龍の子学園小学部)

龍の子学園は1999年4月に開校した,ろう者によるろう児のためのバイリンガル・バイカルチャー教育実践の場である.現在,日本のろう教育では口話・指文字・キュードスピーチ等の様々な手段が用いられており,混沌とした状況である.日本手話の環境におけば,聴児が日本語を獲得するプロセスと同じように,ろう児は日本手話を自然に獲得することができる.ろう者の言語である日本手話を共通言語とすることによって,ろう者の言語や文化の継承を図り,さらに,日本手話で日本語の読み書きを高める,これが我々の目指すバイリンガル・バイカルチャー教育である.

 

手話言語環境にある聾児が表出した2語文における指さしの役割

武居渡(金沢大学教育学部)

 

手話習得の環境の違いが手話表現に及ぼす影響:手話言語の表現の評価の試み

赤堀仁美・赤堀美里・乗富和子・津山美奈子・福田友美子(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)・武居渡(金沢大学)

20歳前後から20歳代の聴覚障害者を対象に,13語〜18語から成るかなり複雑な構造の手話文を刺激にして,手話言語の表現の評価を試みた.その結果を分析して,手話習得の時期や環境の違いが手話表現に及ぼす影響を検討した.その方法や結果について,詳細を報告する.