2021年2月2日 更新
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日本手話学会第45回大会(第19回日本手話教育研究大会と合同開催)
2019年9月7日(土)
国立障害者リハビリテーションセンター学院(埼玉県所沢市)
【研究発表】P: ポスター発表 S: 登壇発表
P1 手話寺子屋カリキュラム
小倉 友紀子(NPO法人手話教師センター)高田 和香子(NPO法人手話教師センター)
WPの手話教室「手話寺子屋」は、ろう者の言葉である「日本手話」を尊重し、その啓蒙と普及を目的としています。手話学習者が自然に日本手話を習得できるようにする直接教授法「ナチュラル・アプローチ法」で指導を行っています。今年で25周年を迎え、中野の他に、大阪、名古屋、日本橋にも開設し、それに伴い手話講師も増員してきました。そこで、いくつかの問題が生じたため、現在、解決に向けての取り組みをしております。
P2 授業中の対応方法
林 咲子(NPO法人手話教師センター)海野 和子(NPO法人手話教師センター)
大学や専門学校などの教育現場において手話を教える際、「発達障害」の傾向がみられる学生への対応方法に苦慮することがある。本報告では報告者自身の実践に基づき、大人しく内向的な学生や集中力に欠け多動性の見られる学生への対応方法について紹介する。そして、学生の特性を理解し、個々に対する適切なアプローチについて考察する。
P3 文末詞「いみ」は因果関係を示す:推論に基づく主観的因果関係
黒田 栄光(NPO法人手話教師センター)高嶋 由布子(日本学術振興会)
本発表では、日本手話の文末に現れる「いみ」の用法を整理し、(a)理由を問うときのWHマーカー、(b)平叙文で理由を示す因果を表す接続詞、(c)理由を確認する極性(Yes-No)疑問文での因果を表す接続用法,(d)その派生として、推論した因果関係を示すものがあり,これが推論的証拠性の意味を含むことを指摘する。
P4 不就学ろう者の手話表現分析:宮窪手話との比較考察による位置付けの試み
矢野 羽衣子(筑波技術大学大学院)大杉 豊(筑波技術大学)
これは不就学ろう者の手話による語り(生活史)を映像で記録し保存する取り組みの一環である。最近収録した不就学ろう者1名の手話表現に言語学的な要素がどの程度見出せるかを、宮窪手話に関する研究成果と比較して考察し、手話言語の生成過程への位置づけを試みることを本論の目的とする。
P5 日本における手話言語観:コーダの語りからの考察
安東 明珠花(東京大学大学院)
本発表はコーダの語りから日本における手話言語観(「手話とは何か」という考え方)を再検討する。コーダの多くは、手話=日本手話であると認識しているにもかかわらず、社会的文脈における手話の認識とのズレを経験していることが分かった。そのような認識のズレを埋めることができれば、誤解の犠牲にならず自分の言語使用について客観的に考察・説明できる人が増えるだろう。
P6 人工内耳時代の言語権:ろう・難聴児の言語剥奪を防ぐには
高嶋 由布子(日本学術振興会)杉本 篤史(東京国際大学)
近年,人工内耳装用が早まり,難聴児の音声言語獲得への期待が高まっている。機器に頼る音声言語至上主義が席巻し,難聴児が機器なしで完全に身につけられる手話での言語権について,蔑ろにされている。本発表では,この状況が引き起こす問題点を指摘し,難聴児の言語獲得の権利を守るのにはどのような議論が必要か検討する。
S1 Yes/No疑問文習得のための道しるべ
佐野 立太郎(NPO法人手話教師センター)
手話学習者に日本手話のYes/No疑問文と答え方を習得させるため、視覚教材(対比表とフォローチャート図)を考案し、手話の授業で導入してみた。その結果、よい効果を得られたので、導入に至った経緯と指導方法をまとめ、その効果と課題について述べたい。
S2 大学の授業としての日本手話の指導:テキスト導入としての/アル//イル/の活用
下島 恭子(群馬大学)能美 由希子(群馬大学)川端 伸哉(群馬大学)金澤 貴之(群馬大学)
本学では、日本財団助成事業として、手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラムを授業科目として開設している。視覚―動作モダリティである日本手話を学ぶための初学向けテキストについて再編成し、〔/アル/〕〔/イル/〕を導入として用いることとした。その結果、〔/アル/〕〔/イル/〕とNMM(文末頷き)はスムーズな習得がなされていた。一方で、主語と同時表出が必要な眉あげ表現には困難さが見られ、文法説明および反復練習の重要性も示唆された。
S3 日本手話の中の提喩:認知言語学の観点から
松田 俊介(東京大学大学院)
提喩とは、上位概念を指す言葉で下位概念を表す、または下位概念を指す言葉で上位概念を表す表現である。本稿では、日本手話(やアメリカ手話、中国語、タイ語)に提喩が広くみられることを示す。
S4 日本聾唖史・聾唖教育史とactor-network theory:日本聾唖史・日本聾唖教育史における「近代化」と「自我」の再考
末森 明夫(産業技術総合研究所)
本稿では『児戯笑談』唖関連記述をはじめとする徳川時代後期の文字史料と、《百面相》群をはじめとする徳川時代後期非文字史料の対照を通して、日本聾唖史・聾唖教育史に徳川時代後期を布置し、徳川時代後期と明治時代初期の連続性および不連続性の可視化をはかった。さらにactor-network theoryを援用することにより、日本聾唖史・聾唖教育史における「近代化」と「唖的自我」の本質の再検証をおこなった。この試論は、欧米の近世・近代区分論とは一線を画し、日本社会を東アジアに定置することにより、日本における聾唖史・聾唖教育史に一石を投じるものである。
【基調講演】
ろう通訳者:その課題と展望は何か?
ロバート・アダム 博士(Dr. Robert ADAM)(ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ)
【シンポジウム】
ろう通訳の将来像
シンポジスト:Robert ADAM(UCL)木村 晴美(国立障害者リハビリテーションセンター学院、NPO法人手話教師センター)白澤 真弓(筑波技術大学、日本手話学会)
司会:末森 明夫(産業技術総合研究所、日本手話学会)